アトリエ・マイルストンブログ

2016年1月26日火曜日

久々ワイエス作品、登場

火曜日・晴れ
アトリエは、お休み。

「名作美術館(その156)」

今回は久々のワイエス作品を紹介します。

Andrew Wyeth "The Intruder" (1971)

 イントリューダーは「侵入者」とでも訳せる含蓄のあるタイトルです。
1頭の犬が河原の岩の上で、白シルエットでその姿を現しています。
その目線を河原奥の入り江へと向けて、何者(物)かの気配にその全神経を傾注させているようです。
それはまた上部に僅かに除く空と木々が成すすぼまった地形を認識させて、見る者の視線をも導いてもいます。
この絵、侵入者としての犬を画題にしながらも、実は侵入された周囲の自然こそが主体であることが分かります。
侵入された自然もまた全体としての一つの生命体であり、外部からのよそ者を静かに受け止めているようです。
緩やかな流れらしい水面の泡が画面を覆う静寂を物語っているようであり、また侵入者の呼吸をも感じられます。
自然に対置する人間の文明側に立たされた1頭の犬、その侵入者を見守る自然の奥深さを感じさせる名作です。

我が国でも人気ある画家の作品、そこに見る風景は「描かれない空白」に万象を見る水墨画のようでもあります。
画家ワイエスは逆に「徹頭徹尾描く」ことで、レンズでは到達し得ない「見えざる物」をも事物に重ね足せたのです。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その185)」

上述のワイエス作品の製作年と同年の懐かしのヒット曲で、しかも「犬」繋がりと言うことで紹介します。
我が国でも「オールド・ファッションド・ラブ・ソング」等が大ヒットした米国のヴォーカル3人組の曲です。
人間社会や都会を脱出して自然に触れ癒されると言う、正に「脱出者」であり「侵入者」でもある曲です。

スリー・ドッグ・ナイト、「アウト・イン・ザ・カントリー」
Three Dog Night, "Out In The Country" (1971)

国内では上記の「オールド・ファッションド~」や「ジョイ・トゥー・ザ・ワールド」がヒットして知られています。
が、筆者の故郷オキナワでは、米軍の影響下でこの曲と「ママ・トールド・ミー」の2曲の方が人気でした。
ベトナム戦争特需に沸く南島には数多くの内外のバンドが集結、彼らの2曲も良くコピーされていました。
「ママ・トールド~」はハードに、そしてハモンドがフューチャーされたこの曲はチーク・ダンス・タイムに。
虹色に点滅するライト・ショーで浮かび上がるクラブのフロアには戦地へと向かう多くの新兵たちの姿が。
彼らもまた文字通りの「アウト・イン・ザ・カントリー」の一夜を疑似ロマンスの享楽で過ごし、旅立ちました。
「イントリューダー」の彼らを待ち受けていたかの地もまた地獄の戦場であったことは言うまでもありません。

筆者がバンドに燃えていた6~70年代初頭、アメリカもまた最もクリエイティブだったような気がしています。
夜空の星々の綺麗な冬の最中、「恒久平和」の訪れを切望してやみません。

By 講師T