アトリエ・マイルストンブログ

2016年12月29日木曜日

ワイエスの風

木曜日・晴れ・本日もまた穏やかな小春日和(*^-^*)
アトリエ冬休み7日目

「名作美術館(その204):ワイエスの風」

当コーナーでの最近のワイエス作品、1週(12/5のボナール)を挟んで5回目の登場です。
画家が好んだ秋から冬にかけては、質量共にやはり見所の多い世界が目白押しです。
今回のこの作品もまた画家ならではの(反語的)抒情世界です。


「海からの風」 / アンドリュー・ワイエス
Andrew Wyeth, "Wind From The Sea ",1947、47 x 70 cm, Tempera on the hardboad

画題の海はやはり画家特有のチラリズムで、窓枠左にごく僅かしか垣間見えず、しかも光の反射で表現されるのみで、
海と言えば青(色)もしくはその表面の波等の属性は無視、又はむしろ積極的に排除され、ただ光るのみの存在です。
その海表面に光を与える空さえもまた空らしくは扱われず、曇天の掴み所のない無表情な空として存在するのみです。
その狭間で地平を成す森もまた濃いコントラストとして扱われ、そのシルエットが地形の向こう側を暗示しています。
ここで画家の仕掛けた罠がその効果を発揮し、緻密に描かれたレース・カーテンの織りなす斜角が活きてくるのです。
薄汚れて見えるカーテンが目に見えざる風を示し、見る者の顔面に迫り、視線を遮ろうとさえしているようかのです。
ではその室内に大きく侵入する風は一体どこからやって来ているのでしょうか?
それは遠景の森と海の作り出すごく僅かな斜角の線遠近法によって導かれる画面中央辺りを暗示しているのかも。
前景と遠景を繫ぐ茶褐色の冬枯れ草地、または海岸の砂地が風の吹いてくる出所をカーテンと共に教えています。
そこは窓枠左の海の方向ではなく、黒々とした森の向こう側にこそ、その本体の大海原があるのかも知れません。
カーテン上の半ばまで降ろされたサンシェードもまた海からの潮風と夏の紫外線とで傷み、時の経過を報せます。
画家の描いた全ての物体に、見えざる風の性質が付加され、見る者の記憶の中の情緒を引きずり出すのです。

画家はスーパー・リアリズムと言う手法を用いつつも、非可視的な情緒を求めると言う反語的なテーマに生きました。
その本質が、画家が他の多くのアメリカン・スーパー・リアリズムの画家たちとは一線を画す所以でもあるのです。
この建物は?その住人は?季節は?時間は?温度は?風は冷たい?轍の行く先は?森の向こうには?・・・
眼前のリアリズムなのに、眼前の物を超えてしまう世界・・・。推量と想像の物語は尽きません・・・・。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その250)」

今回の再登場曲、上の作品とは直接的な繋がりは特にありません。
但し、以前ワイエスの別の作品を取り上げた時に、その雰囲気繋がりで紹介したことのある曲です。
そう言う点では共通した「風」の存在があるようで、眼前の風景がパンアウトされて遠くなってゆきます。
筆者の大定番・愛聴盤の中の1曲で、その時の動画と全く変わりなく、久々・再びでの登場となりました。
澄み渡る青空と茶褐色の冬枯れ木立の光景を見ていると、自然に脳内ジュークボックスでかかります。
筆者の大好きな曲を大好きなグループがカバーした渾身のライブ映像です。
瞑想的で幻想的なユニゾン、何故だか お線香の香りさえ漂ってきそうです。
意識が次第に浮遊してゆく疑似トランス状態、お楽しみください。

ザ・コアーズ、「リトル・ウィング」(アンプラグド・ライブ)
The Corrs, " Little Wing ( Jimi Hendrix ) ", Unplugged Live 

スーパー・バンドU2と共に、アイルランドが生んだスーパー兄妹バンドの民族色濃い演奏、素晴らしいの一言です。
姉のフィドル、三女のアイリッシュ・ティン・ホイッスル(ブリキ笛)、次女のバウランと言うハンド・ドラム、空間豊かです。
テンション(分数)コードを活用した兄のアコースティック・ギターももちろん秀逸で、レイジーなシャッフルが快感です。
アイリッシュ(ケルト)音楽が大好きな筆者にとっては垂涎の世界で、このアンプラグドDVDはヘビー愛聴盤です。
バックを彩るハモンド・オルガンや・メタル・スライドギターも秀逸で、見所・聞き所が満載で嬉しくなってしまいます。

1年の蓄積疲労を癒す日には最適な音楽で、また新たな気持ちで年の瀬や新年準備に向かえそうです。
筆者個人への「お疲れ様・ご褒美 音楽」、共有できたのなら幸いです。
( 筆者も久々に埃だらけのメタル・スライド・ギター(重い!)が弾きたくなってきました。)
頑張ろう。

By 講師T