アトリエ・マイルストンブログ

2016年4月18日月曜日

明治の洋画-1、藤島武二

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「名作美術館(その168):明治の洋画(その1)」

今回から明治時代の我が国の洋画(油絵)を随時、紹介してみたいと思います。
「昭和さえ遠くになりにけり、ましてや明治など過去のその奥」との事で、改めて振り返ってみることにしました。
文明開化の明治だと言うことで、洋画の黎明期の先駆者やその作品を取り上げるのが常套・王道ですが・・・。
例えば高橋由一の「鮭」「花魁」や、江戸末期に西洋の遠近法や明暗法を用いて風景画を描いた司馬江漢など。
でも当コーナーでは、教科書的な年代順などを無視して、筆者がその時々で見たい作品を紹介していきます。
と言うことで、その第1弾が、明治後半の
藤島武二、「古典的様式美の女性たち」
です。

「女の横顔」                 「芳惠(1926年)」

   「東洋振り(1924年)」    「天平の面影 (1902年、明治35年)」

 「女性半裸像(1926年、大正15年)   「 蝶(1904年、明治37年)」

藤島武二は慶応3年(1863年)鹿児島県に生まれ、日本画を学んだ後、24歳で洋画に転向。
同郷の巨匠・黒田清輝の推薦で東京美術学校で長年教鞭を取り、ヨーロッパにも4年間留学。

御覧のように画家の作風は女性の典雅な形象が美しく、西洋ロマン主義の影響を強く受けています。
横顔の女性像は、イタリア・ルネサンスの画家ポライウォ-ロの影響が感じられます。
「天平の面影」ではギリシャ彫刻の美の立像姿勢・コントラポストを取り入れています。
「蝶」では、ミューシャなどの装飾的なアールヌーボー派の画家の影響が見られます。
他にも丸みを帯びたソフトなレリーフ的階調等には、ラファエロの影響も感じられます。
そんな西洋の美の規範と、チャイナ服や着物等の東洋文化との融合を図っています。
題材的にはロマン主義的ですが、画の構成要素は西洋古典主義の様式美に準じています。

画家のお洒落な感覚は現代に於いても充分に通用するもので、普遍的な美の規範が感じられます。
と言うよりもむしろ約100年も前に、このような洒脱な審美眼を有していたことに驚嘆さえ覚えます。
ネット時代へ突入して久しく文化的国境が錯綜しつつある昨今、時には過去を振り返るのも良いかも。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その198):和製ポップス、希代の名曲」

当コーナーもまた過去を振り返ってみましょう、と言うことでこの珠玉の名曲を選びました。
筆者の幼年時代、占領下にあった南島の米軍ラジオ放送でも頻繁に流れ出でてきました。
美しい詞と旋律は御承知の通り、筆者・高校時代での「再発見」は、そのバック演奏でした。
ジャジーでスウィンギーで、その上品なオシャレ感は鳥肌もので、傑作曲の正に白眉です。

「上を向いて歩こう」、坂本 九、作詞:永 六輔、作曲:中村八大(1961年)
Sukiyaki ( Ue o muite arukou ) / Kyu Sakamoto 

言わずと知れた戦後ポップスの今でもダントツNo,1の至宝です。
国内は元よりイギリス、フランス、ベルギー、オランダなどヨーロッパ各国でも大ヒット、
全米ビルボードでも3週連続で1位、同じく全米キャッシュ・ボックスでも4週連続1位、
またオーストラリアでも1位、全英チャートでも10位を獲得した正に世界的名曲です。

「スキヤキ」と言うタイトルの可否はさておき、大ヒットに寄与したことは間違いありません。
歌を盛り立てるバック演奏のアレンジは素晴らしく、イントロのシロフォン(木琴)に始まり、
サックス隊の甘いオブリガート(副旋律)や、トロンボーンの柔らかな唸り、まったり金管隊、
軽妙で歯切れ良く、時に切なく流れる弦楽隊、間奏の口笛、それら全てが美しい響きです。

我が国は遠い昔日より、他国の物をうまく取り込み融合させる文化と言われますが、これはその傑作です。
永 六輔による美しい言葉、中村八大による甘い旋律、坂本 九による温かい歌声・・・。ジャジーなアレンジ。
辛い哀しい時代を生き抜いた戦後の彼らがそれを吸収・発明、世界がそれを発見したのです。

文化融合時代の今を生きる私たちがそれを再び発見できるのです。いともたやすく・・・。
SNS、youtube、そして投稿者に感謝。
ナダ(涙)ソーソー・・・

By 講師T