アトリエ・マイルストンブログ

2016年3月14日月曜日

追悼、影のビートルズ逝く

月曜日・寒戻りの冷たい雨・強風

「名作美術館(その163)」 兼
「デイリー・ギャラリー(その34)」

今日は、ビートルズに因んだ特集です。

「レコード・ジャケット・デザイン」

今や音楽もデジタル時代。CDからMP3へと、メディアも聞き方も急速に変貌する時代に、レコードの話です。
特にLPと言われる直径30cmはある合成樹脂製の円盤が一世を風靡、収録曲目の多さで人気を博しました。
当初はヒット曲のベスト盤としての価値が主でしたが、ビートルズの台頭と共に重要なメディアに変貌しました。
ビートルズはLPを単なるベスト盤とは捉えず、ある一つのテーマやコンセプトでまとめ上げるようになりました。
同時に従来の歌手写真と題字と言う既成の様式を打ち破り、ジャケット・デザインもアートとして扱いました。
楽曲と共にその大きな視覚性を利用して、アーチストの自己表現の場として、自らの感性を主張し出しました。
ジャケット・デザインはアートとして次第に市民権を得、多くのアルバム・デザインの名品が産み出されました。


ザ・ビートルズ、「リボルバー」、アルバム・デザイン:クラウス・フォアマン(独)、1966年

さて前置きが長くなりましたが、
今回の「リボルバー」、前作・前年の「ラバー・ソウル」と並び、ビートルズ中期の傑作アルバムの一つです。
ご覧のように4人のメンバーの線画イラストに写真の目や姿がコラージュされた軽めの洒落たデザインです。
デザインを担当したのは西ドイツ(当時)で知り合ったクラウス・フォアマンと言うベースも弾くアーチストです。
この斬新な線描画アルバム、タイトルこそ記されていますが、ビートルズと言う名はどこにも見当たりません。
有名になった彼らの似顔絵の「絵」が「文字」に勝っているとでも言っているような絵画優先のデザインです。
グラフィック・デザインに分類されるとは言え、その時代を象徴するアイコンであることに間違いありません。
30cm四方のアート世界、南島育ちの筆者たちにとっては、まるで1本の映画を見る以上に衝撃的でした。
メディアの変革により今では見る(聞く)ことのないLP盤(アルバム)、その音質の存在感も豊かなものです。
レコードを聴いた後、同じ曲をCDで再生するとその差は明白で、CDの音質は硬く空気の無い真空の様です。

「リボルバー」 レコーディング時のビートルズの面々。
アイドルからアーチストへと変貌を遂げる一瞬間です。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その192):追悼特集」

このコーナーでの追悼特集は、昨年のB.B.キングや最近のグレン・フライなど、時折紹介しています。
出来れば訃報など聞きたくはないのですが、命あるもの燃え尽きるのが定め、この日がやって来ました。
最近でもやはり英国の二人のミュージシャン、デビッド・ボウィーやキース・エマーソン等が他界しています。
5人目のビートルズとか影のビートルズ等と称された名プロデューサーがこの世を去りました。享年90歳。
名はジョージ・マーティンと言い、数々の傑作や名曲をビートルズと共にコラボして世に送り出しました。
ビートルズの4人と、その彼が出会ったことをこの世の奇跡と称え、最大の賛辞を贈りたいと思います。
中期の傑作アルバム、「サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の中の最後の曲です。

「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」、ザ・ビートルズ(1967年)
"A Day In the Life",The Beatles ( John Lennon, Paul McCartney)

メンバー4人と共に打ち合わせ中のジョージ・マーティン(中央)
ジョンとポールが書いた2つの曲を、サイケデリックな味付けで繫ぎ合わせた摩訶不思議な空間が魅力です。
ドキュメント動画の47秒辺りにジョージ・マーティン本人アップの姿が見られ、オーケストラの指揮もしています。
「ペニーレーン」のピッコロ・トランペット、「イン・マイ・ライフ」のチェンバロ、「エリナ―・リグビー」の弦楽も名編曲です。
英国紳士の上質な品格と機知に富んだ最良の編曲、高校時代の筆者のギター・バンドでその再現は不可能でした。
ビートルズが産み出した数々の楽曲をこれ以上は無いと言うくらいのアレンジで活き活きと飾った功績は偉大です。
感謝・合掌

By 講師T