アトリエ・マイルストンブログ

2016年2月8日月曜日

久々ワイエス作品(その3)

月曜日・晴れ
南風が吹いて、春の訪れのような温かさでした。

「名作美術館(その158)」

「ワイエスの習作・水彩画 (副題:スノー・ホワイト)」

Andrew Wyeth. " Open House ",Study, Water Color (1979)

" Fire Wood ",Study for [Groundhog Day], Water Color (1996)

今回の2作品はタブロー(本画)ではなく、水彩絵具による習作です。
上は「空き家」、下は「薪(用の丸太)」とでも訳せる雪景色を描いた風景画です。
御覧のように、使用した紙の白さを最大限に活かした簡潔な表現が魅力的です。

両作品共にテンペラ絵具を用いたマチエール(質感)豊かな濃密な本画も存在します。
その本製作前に何枚も描くスケッチ的な水彩画の美しさもまた画家の本領発揮と言ったところです。
、最小限の調子や斑点で、紙の白さを雪の白さに見立てた画家の眼差しと技は水彩描法の見本です。
加えられた速度あるウォッシュ(垂らし込み法)で描かれた建物に画家独特の質感が簡潔に出ています。
2週前の当コーナーでも触れたように、東洋の「水墨画」にも通ずる画家特有の感性と技術が快感です。
画家の作品のテーマの一つとでも言える白の存在が活きて、スノー・ホワイトが眩しく目と心に映ります。

「画家のアトリエ」

上は画家ワイエスの生前のアトリエの様子を捉えた写真の1枚です。
右のイーゼルに架けられた本画や、奥の壁面に多数貼られた下絵・習作スケッチが興味深いです。
画家作品に度々登場する犬君の姿や背景用の壁面の習作も見え、その製作過程が垣間見えます。
何でもスピーディーなことが求められがちな現代に於いて、
1枚の本画が誕生するまでの画家の伝統的な段階を踏んだ営みが見えて、何だか嬉しくなってきます。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その187):心温まり唄」

早くも春の兆しが現われ始めた今日この頃ですが、寒い日々もまたやって来ます。
上のワイエス作品の製作年にも因んで、今回は心温まる懐かしい名曲を紹介します。
若かりし筆者が厳しい現実社会に晒され始めた頃の曲で、幾度となく慰められ癒され励まされました。
このコーナー187回目にしての初登場が以外なくらいの筆者愛聴盤でした。
サイモン&ガーファンクル等と並び、「アメリカの良心」とも称されたシンガー・ソングライターの傑作です。
音楽家の長期ツアーを影で支える裏方ローディーや、足を運んでくれる観客への愛情の眼差しが感動です。
9分にも及ぶ長い曲(メドレー)ですが、ドラマチックで美しいハート・ウォームな詞の世界、是非お聞き下さい。

ジャクソン・ブラウン(ボーカル、ピアノ)、「ロード・アウト~ステイ」(ライブ)
Jackson Brown, " The Load Out ~Stay (medlay) " (1978)

説明不要の名曲ですが、少しばかり英単語の訳を以下に記します。
題名のロード・アウト は( PA機材等の)「搬出」、ステイ は御存じ 「残って、居て、とどまって」の意。
トラスは鉄製支柱で、ランプはトラック荷の搬出入時の昇降台で、野外ステージ設置の際の必需品。
8 トラックス は60年代頃に流通し衰退した幅の太い音楽テープで、日本ではカラオケ用として市販。
ルーラル・シーンは田舎の光景。CBはトラッカー愛用の無線。リチャード・プライヤーはコメディアン。
プロモーターは演奏会を、ユニオンは音楽家を司り、契約以上の交流時間の見逃しを請願しています。

ステイ後半で登場の女性ヴォーカルは、ツアー・バンド・メンバーのローズマリー・バトラー。
同じく後半最後の子供のような高音は、友人でありツアー・メンバーのデビッド・リンドレー。
リンドレーは著名な弦楽器名手でライ・クーダーやボブ・ブロズマン等と共に沖縄音楽にも共感する音楽家。
(安田大サーカスのクロちゃんみたいですね。)

今回はドキュメント仕立てに仕上げた動画ですが、スマホの方には歌詞の大きな見易い動画もあります。
また詳しい日本語訳詞はネット上にも幾つかありますので、検索の上、素晴らしい世界を味わって下さい。

社会派でヒューマニスト、ジャクソン・ブラウンならではの心温まる歌詞・楽曲が、今でも新鮮です。
その唄や演奏に誘われて、筆者の中ではもう春が既に満開です。
「春来たらじ、里にも気にも」

By 講師T