アトリエ・マイルストンブログ

2015年11月30日月曜日

抱一の「月に秋草図屏風」

11月末日・月曜日・晴れ

「名作美術館(その148):秋の絵-5 (最終回)」

酒井抱一(ほういつ)、「月に秋草図屏風」六曲一隻、139.5 x 307cm、ペンタックス(株)所蔵

江戸琳派の絵師・酒井抱一作品は、昨年の秋に取り上げた「風雨草花図屏風」に続き、2度目の登場です。
長く伸びる葛(くず)のしなやかな曲線を中心に、ススキ・萩・桔梗などが絡むような構図で描かれています。
中央で輝く銀色の満月よりも上方に伸びた葛の形象はどこまでも伸びやかで、かつ粋で洗練されています。
秋の寒風で逆巻く葉々は、「垂らし込み法」で一気に描かれているようで、その軽やかな優美さが見事です。
西洋的な物理的地表や中空はもはや無く、万象の摂理で活かされ消滅する生命の儚さが目に沁み入ります。

上図は中央の二曲のみをトリミングした構図で、葛の枝葉の描くらせん状の曲線の優美さが、更に引き立ちます。
地上を照らす銀月が地上の生命たちを憐れんでいるようで、また同時に生命たちの息吹も聞こえて来るようです。
絵師にして、俳人でもあった画家・抱一の面目躍如な詩情溢れる心眼と魂の風景画です。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その175):秋終わり歌」

今日の当コーナー、上の作品の「秋と月」繋がりと言うことで、この曲を選びました。
アメリカ・フージョン音楽界を代表する日系3世バンドの、正に東西のフージョン(融合)ならではの1曲です。

「オータム・ムーン」、ヒロシマ
" Autumn Moon " / Hiroshima (1992)

70~90年代、米国を始めワールドワイドな活躍をしたバンド・ヒロシマ、懐かしの登場です。
和楽器の琴や尺八などを多用し、ジャンルを超えた先進性と卓抜した作曲・演奏能力が魅力的でした。
今でこそ和楽器の若手奏者が多方面で活躍、認知されていますが、ヒロシマはその先駆的存在でした。
揺らぐような旋律や音色、空間の軸も揺らぐようで、抱一の超3次元的な画面にも似合っているかも知れません。

秋も深まり、明日からは いよいよの師走、冬到来。
日々の雑用に流されることなく、感性豊かな先人たち同様、季節の微妙な移ろいも感知していきたいものです。

By 講師T