アトリエ・マイルストンブログ

2015年11月3日火曜日

「文化の日」のコラボ傑作

火曜日、晴れ
「文化の日」の祭日

文化の日特集:「名作美術館(その144)」

「金銀泥四季草花下絵和歌巻、鶴下絵和歌巻に見る宗達・光悦の傑作コラボレーション」
「もしくは、平仮名、大和絵の発明・発見」


四季草花図下絵和歌集(一部、部分)、東京・畠山記念館 蔵

鶴下絵三十六歌仙和歌集の一部、京都国立博物館

 「桔梗に薄(すすき)」

「楓」

書:本阿弥 光悦
装飾:俵屋 宗達

「コラボレーション」と言う芸術家同士が行う共同制作を表す言葉、今でこそ日常的に使用されています。
が、400年も前に我が国でそれが行われ、全人類的財産とも言うべき素晴らしい傑作が誕生していました。
本阿弥光悦の書いた抑揚感のある流麗な草書体、その下の装飾絵との調和は筆舌に尽くし難い美しさです。

そんな美の集大成とも言える画面で、特に目を引くのが柔らかく伸びやかなフォルムを持った平仮名の存在です。
中国から伝来した漢字、それを簡略化して生まれた平仮名の持つ筆致の美しさは書の貴婦人とも言える存在です。
その平仮名、平安時代(西暦900年頃)に考案され、成立当初は主に女性たちを中心に使用されたとの事です。
その仮名文字が、その後の我が国の文化形成に多大な影響・貢献をしたことは、ここで述べるまでもありません。
また、
平仮名は単なる文字と言う役目を超えて、絵画の絵面(えづら)をも造ったのではと筆者は勝手に推測しています。

例えば、今回の和歌集では、
最も手前の草書体による墨文字(本阿弥光悦・筆)。
その下で「渋・派手」に息づく、画家・俵屋宗達の装飾。
中景・書の内容の補完的情緒としての洗練された図案と形象。
月や鶴、そして蔦や楓や薄や桔梗等がこの上もなく美しいです。
無地、又は淡い墨や金銀の垂らしこみや、輪郭線のない没骨(もっこつ)法による背景・遠景としての紙面。
その奥行きはどこまでも深く、見る者次第では無限です。

その美の世界を下地として、あるいは触媒として、
上記のたおやかな光悦の流麗な書を呼び込んだと言っても決して過言ではありません。
両者の感性が渾然一体となって、この美しい和歌集の比類無き魅力を形作っています。
二人の造り上げた馥郁たる世界、平仮名の存在なくしては成立しないのではないかとさえ思ってしまいます。
その美しい筆致の和歌、読めないのは残念ですが、インストルメント曲のように、その形象を鑑賞しています。

「親鳥のニワトリが先か、そのタマゴが先か」
そんな堂々巡りのジレンマに陥りそうですが、その平仮名が大和絵を産んだのではないかと推量しています。そして、
そんな柔らかな女性的な大和絵が、宗達を祖とする後の「琳派」にも繋がったのではないかとも推量しています。
今日は「文化の日」。我が国に綿々と息づく「平仮名」と「大和絵」の柔らかさを再確認する機会にと思っています。

(今回の当コーナー、断片的・散文的でまとまりない文章となってしまいました。拙意を汲んでいただければ幸いです。)

By 講師T

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「キッズ・クラス、お休み日のお知らせ」

来る11月7日(土)~8日(日)と、14日(土)~15日(日)の両2日間、
キッズ・クラスの授業を、お休みとさせていただきます。
どうぞ、よろしくお願いします。