アトリエ・マイルストンブログ

2015年10月26日月曜日

クリムトの落款風サイン

月曜日・快晴
アトリエ定休日
都内では「木枯らし1号」も吹いたとのこと。

「名作美術館(その142):クリムトの落款風サイン」

当コーナーでの計9回に渡ってのクリムト作品、最後の特集です。
「落款風サイン」と言う題目は、以前当コーナーで紹介したホイッスラーの作品に次いで2度目の登場です。

   左・エミール・フロッジの肖像(1902年)    右:マルガレット・ストンボルグの肖像(1905年)

今回もまた肖像画としての人物についての記述はありません。ご了承下さい。
ご覧のように、上流階級らしい華やかな衣装を身にまとった女性の二点の肖像画です。
とは言っても上半身中心の伝統的な構図のそれではなく、意識的に縦方向に伸ばされた構図です。
左の作品は、女性の衣装とステンドグラスや宝飾品のような頭部周囲の装飾が印象的な構成です。
その青い衣装の女性は「金泥油絵ー3」で取り上げた、うら若き女性のその後の肖像画とのことです。
一方の右作品は白装束が中心の色彩を抑制した画面で、代わりに幾何学的な背景を擁しています。
共通する要素として、写実的ながらも意図的に平面化していて、光による立体感は避けられています。
また肖像頭部の背景に装飾や幾何学模様を配し、肖像画としての価値観を意図的に薄めています。


今回の当コーナーで注目したのが上の画家のサインで、正方形に様式化され、図案化されています。
平面的かつ装飾的で、軸装を連想させる極端に縦長な構図、日本美術の影響が伺われる肖像画です。
19世紀・象徴主義絵画の巨匠、エロティシズムの大家、グスタフ・クリムト、
その画家のエキゾチックな画面を演出するにふさわしい落款風サイン、有機的かつ美しい意匠です。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その169):秋進み歌」

耽美的な作風のクリムト作品には、似つかわしいかも知れません。
「アルビノーニのアダージョ」として有名なこの曲のピアノ・アレンジ・バージョンです。
クリムト作品を象徴するかのような、美しい女性たちのモノクロ映像集も印象的です。

「アダージョ」 / トム・バラバス 
Adagio / Tom Barabas (1998)

「アルビノーニのアダージョ」として広く知られていますが、実際の作曲はレノ・ジャゾットと言う人物とのこと。
世界中の葬儀の際に最もよく使われている曲とのことですが、最近も筆者二度に渡って聞いたばかりです。
その美しさが厳粛な空気にふさわしいことは万人の認めるところで、筆者も高校時代以来、愛聴しています。
その格調高き哀愁の旋律、これからの季節にもまたふさわしい香りと温度感を持っているような気がします。

この秋、「アダージョ(遅くの意)」の如く、静かに緩やかに深まれり。

By 講師T