アトリエ・マイルストンブログ

2015年10月19日月曜日

クリムトの金泥油絵ー4

月曜日・晴れ
アトリエ定休日
「名作美術館(その141):クリムトの金泥油絵(その4)」
「金、金、金の金尽くし」

グスタフ・クリムト作、「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像」(1907年)
油彩・金箔・銀箔、1.38m x 1.38m、ニューヨーク、ノイエ・ガレリエ所蔵(個人蔵)

御存知の方はまだしも、初めてこの絵を見られる方は、その画面にきっと驚愕することと思います。
今回もまた前回同様、描かれた女性自体にではなく、画面を覆い尽くす周囲の金に着目しました。
但し、今回の肖像作品は前回までの金泥に加え、無数の金箔や銀箔そのものも登場しています。

画家が好み得意とする正方形の画面に、裕福そうな夫人の肖像が描かれたこの絵画、正に金尽くしです。
背景はおろか、金模様が夫人の衣装にまで浸入しており、肖像画と言うより正に装飾画たらんとしています。
モデルの夫人の顔・胸・両手もレリーフ(半立体壁)的陰影で、衣装はもはや立体感を完全に失っています。
金地を覆う幾何学的な模様も東洋的であり、蒔絵や襖絵の金箔や金砂子を想起するのではないでしょうか。

画面全体を覆う金以外には、画面下左隅に青畳とその縁布を彷彿とさせる唯一の色面が施されています。
正に日本美術を始めとする東洋やエジプト等に、西洋美術が合体・融合したような 絢爛豪華な画面です。

モデルの女性は実業家の妻で、当コーナーで紹介済みの「ユディト」のモデルだとも言われています。
女性の夫は裕福な銀行家・実業家で、画家本人やウィーン分離派の画家たちを支援したとの事です。
ちなみに当作品、 2006年のオークションで落札された価格は当時最高の166億円(!)との事です。
 下世話ながら、絢爛豪華な画面に劣らぬ、比類無き金満剛毅なる逸話です。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その169):秋進み歌」

今回も「秋進み歌」と言うことで、この曲を選びました。
以前、当コーナーで取り上げた「ユー・レイズ・ミー・アップ」の原作者二人による美しい楽曲・演奏です。
アイルランド出身の女性フィンラーヌ・シェリーの奏でるバイオリンの音色と旋律が深く心に染み入ります。

シークレット・ガーデン、「サムタイム・ウェン・イット・レインズ」
Secret Garden, " Sometimes When it Rains "

画家クリムトの金泥や金箔の華麗さはないにしろ、紅葉してゆく木々の黄金色もまた美しい賜物です。
時々の光や日々の天候により変幻し、散りゆく葉の彩り・装い・饗宴につい目を奪われてしまいます。
生まれて十数年、四季を知らずに育った南島生まれの筆者が出会った初めての「秋」は、まるで宝石の様でした。
筆者が「色彩」に出会い開眼したのは、おそらくその時だったのかも知れません。
何故なら、その翌年の初帰郷で、初めて海の青さにも感動したのですから・・・。

初めて出会った「秋」の色。神宮前のイチョウや、武藏野のケヤキや、鎌倉のモミジや、カボチャや栗やドングリたち。
黄色でもなく、山吹色でもなく、黄土色でもなく、橙でもなく、ましてやオレンジ色でもなく・・・。
初めて見つけて見つめた、秋の「温か、幸せ色」。
色の呼び名、数あれど。いまだ言葉に出来ぬ、もどかしさ。
いまだ言葉に出来ぬ、美しさ。
「その秋、来たりぬ。」

By 講師T