アトリエ・マイルストンブログ

2015年9月28日月曜日

クリムトの金泥油絵(その1)

月曜日・晴れ

「名作美術館(その138):クリムトの金泥油彩(その1)」

グスタブ・クリムト、「音楽」
Gustav Klimt," Musik " (1895)

前回までの「クリムトの淡白風景画」は取りあえず終了。今回は人物描写に卓抜した画家の人物画です。
とは言え人格的要素は認められず、寓意的な趣きの画面を飾る一要素的な扱いと言えるかも知れません。

金泥で彩られた平面的な竪琴を奏でる手に力はなく、周囲の装飾的な円(球?)にも実体感は希薄です。
画面右隅のスフィンクス石像と、女性の姿態のみがかろうじてレリーフ的な立体感を有しているだけです。
画家が一体何を表して、何を言おうとしているのか、いかにも象徴主義らしい謎めいた画面となっています。
西洋文明の流れの礎とも言えるエジプト(スフィンクス)やギリシャ(竪琴)の脈絡の中に現れ出た金色・・・。
多くのアール・ヌーボーの画家や工芸家を魅了した東洋・日本美術に啓発された画家ならではの絵面です。

薄暗い青色の背景に点在する花々は夜空の星々にも似て、また竪琴から発せられた音粒子の様でも・・・。
そう言えば竪琴周りの球体の連なりも、何だか天球儀の天体の運行図のようにも見えてきました。
竪琴に重なる青緑の帯と下部の縦方向の帯状の青緑色は、竪琴由来の流星群かもしれません。
そうすると・・・、金色の竪琴は下弦の三日月に見立てることも・・・。
ムジーク(音楽)と題されたこの作品、耽美的・摩訶不思議さがたまりません。

昨夜は「中秋の名月」、今夜はスーパー・ムーン・・・。
夜空と空気の澄み始めた秋とは、昔日より愛称が良いようです。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その166):秋進み歌」

今夜の月はいつもより確かに大きく、また輝いて見えました。
ロマンチックで清楚な月も良いですが、月はやはり隠微さを含んだ神秘的存在です。
そこで今夜のスーパー・ムーンに因んだ曲をと言うことで、この小曲を選びました。
ギターの淡々としたアルペジオ進行、シンバルの連打音、寒々とした残響等々・・・。
澱を成して沈殿していくようなアンビエントな空間が今も色褪せません。

キング・クリムゾン、「ムーン・チャイルド」
King Crimson,"Moon Child " (1969)
From Their 1st,Album "In the Court of the Crimson King )

筆者若かりし高1の頃、この曲の入ったLPレコードを聴いて心底ぶっ飛んでしまいました。
プログレッシブ(前衛)・ロックとかアート・ロック等の新ジャンルで呼ばれ始めた彼らの音、
小さな島の高校生にとっては、まるで異質の遠い遠い天体の音楽のように感じられました。

初めて耳にした「21世紀の精神異常者」「エピタフ」・・・、そしてこのムーン・チャイルド等。
これまで経験のない旋律・和声・変則拍子・音質・編曲・展開は、未曾有のショックでした。
コピーする意欲を微塵も寄せ付けなかった高度で高密度な音空間にただ圧倒されました。

時は60年代後半、本土復帰前のオキナワ。世はベトナム戦争只中の狂気・喧騒の時代。
夢想空間(ドラッグ)だけが、英国の彼ら(音楽)と米国の彼ら(兵士)を結びつけていました。
耽美と刹那。今は昔の、懐かしくも哀しい音空間です。

By 講師T