アトリエ・マイルストンブログ

2015年3月30日月曜日

さくら、さくら、さくら

月曜日・晴れ・温暖
アトリエ定休日

市内では有名なアトリエ近所のMさん宅の枝垂れ桜

「名作美術館(その116)」

巷では桜開花の情報が溢れ、春たけなわの様相を呈してきました。
そこで今回の当コーナーは、日本人の心をくすぐるズバリ「さくら」です。

櫻花図譜 / 三好学 著、大正10年(1921年)

今回は絵画などの美術作品ではなく、学術的出版物に掲載された植物画を取り上げました。
桜の世界的第一人者・植物学者・三好学が大正9年にまとめ、翌年に発行された桜の本格的彩色図譜です。
氏の著作には112品種の桜が掲載され、印刷は原寸大で、しかも木版多色摺りが用いられているとの事です。
柔らかな褐中間色の用紙に再現された桜の花びらには、推測ですが顔料の胡紛が使用されているようです。
デジタルプリント全盛の現代ですら不可能な贅沢品で、芸術的な版画作品集と言っても差し支えないでしょう。
今回はその中から4ページ分のみコピペ&アップしました(名称と画像が左右逆なのは原著が右開き本のため)。

左:牡丹桜、日暮。                       右:有明、名月。    

左:星桜、大島桜。                    右:錦桜、紅梅桜、紅桜。   

学術書とは言え、観察・描画・分類・印刷と全作業に渡って、暖かな職人的愛情が感じられる素晴らしい芸術作品です。
花びらの白さや桃色の色味を再現するために施された水色のボカシ木版摺りにも、繊細な配慮・愛情が感じられます。
単なるリアリズムではないそのつましい円やかな形象を見ていると、何だか和菓子とお茶で和みたくなってしまいます。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その142):春たけなわ歌」

今回の当コーナー、「桜」に因んだ曲を、と言うことで伝統的な「桜幻想曲」なども検討・チェックしました。
が、決定的なものに行き当たりませんでした。そこで映像の桜とそれにふさわしい音楽で選びました。
筆者・高校時代に友人からの勧めて聞いたクラシック初・開眼曲です。確か、パイヤール室内管弦楽団バージョンでした。

「パッヘルベルのカノン」/演奏:クルト・レーデル&プロアルテ管弦楽団
"Canon in D(major)"/ Composer: J.Pachelbel
映像は桜の名所で有名な青森・弘前城の満開の桜との事。よって後半登場の山はお岩木山かも・・・。
このDから始まる4小節の循環コード、往年の有名なポップスやロックの曲にも多数使用されています。
静かに立ち現れ、次第に沈殿・堆積して行く曲調から、筆者には静かに散っていく無数の桜吹雪が見えてきます。

巻頭写真の「枝垂れ桜」、特集の「櫻花図譜」、映像の「さくら」。それぞれの桜をご鑑賞ください。

By 講師T