アトリエ・マイルストンブログ

2014年11月24日月曜日

音楽・楽器好き、フェルメール

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「名作美術館(その97)」
 静謐の画家フェルメール:その4「音楽・楽器好き、フェルメール」

静謐の画家との題名を冠する画家のこのコーナーですが、今回の作品には音楽の調べが響いてきそうです。
30点余の画家の作品には幾つもの楽器が登場します。そこで筆者独断で、画家が音楽・楽器好きと決めました。

 「リュートを調弦する女」 1664年頃                 「ギターを弾く女」 1670年頃
    51.4 x 45.7cm メトロポリタン美術館             53 x 46.3cm ケンウッド・ハウス(ロンドン)

弦楽器を奏でる若い女性が描かれた、いわゆる室内風俗画です。
経済力をつけたオランダの市民たちに流行した当時の絵画形式で、多くの画家達に描かれた人気の主題です。
左の女性はリュートを抱えチューニングの最中、右の女性は小振りなギターを奏でています。
共に画面左を向いていますが、女性を浮かび上がらせる横方向からの光線は全くの逆です。
楽器には視線を向けない女性とその視線の先に物語や思惑が生まれ、見る者の想像をおおいに掻き立てます。
同時に女性の指先から発せられる弦の音色や旋律や和音をも想像して、室内で反響する様も聞こえてきそうです。

観察力や描写力に比類なき才能を発揮する画家ですが、楽器の持つ美しさや構造などにも深い造詣が伺えます。
上画像は、画家の作品モチーフの小道具となった当時仕様の弦楽器のリュート(左)とバロック・ギター(右)です。
裏板の反響板が緩やかな円弧を描いていて、表甲板中央のサウンド・ホールには共に装飾の彫刻が施されています。

以下は、余談です。
ちなみに私見ですが、上の二人の女性は初回で紹介した二点の横顔の少女像と同一人物ではないかと推測しています。
左がメトロポリタン所蔵の青衣の「少女」、右が有名な「真珠の耳飾りの少女」像ではないかと、勝手に想像しています。
件の二点の少女像も職業画家として他者から依頼された絵ではない家族的な温かい視線があるような気がしています。
画家の他の作品にも、この二人(またはその姉妹)ではないかと思われる女性の姿を見つけては、一人楽しんでいます。

ここで一句 「秋夜長、飽きず画集に、想いはせ」 お粗末様

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その121)」

今日の当コーナー、フェルメール作品の楽器演奏にちなんで、バロック・ギターの演奏をお届けします。
(リュート演奏の方は、フェルメール初回の「女性像、二題」で紹介済みです。)

「プレリュード」 / バロック・ギター演奏:エリザベス・ブラウン(米国)
Elizabeth Brown plays "Prelude" by Jacquet de la Guerre

乾いた音色と小さな光の粒が零れ出すような調べが、フェルメールの世界にマッチしているとは思いませんか。

By 講師T